機械保全技能士になるには?資格取得のメリットや1級・2級・3級の違い、勉強方法
※この記事は6分で読めます。
「機械保全技能士ってどのような資格?」
「機械保全技能士の資格を取るメリットが知りたい」
など、機械保全技能士に関して興味や疑問を持っている方もいるでしょう。
機械保全技能士は機械保全に関する知識を証明できる国家資格であり、企業からの評価が高まることで転職・就職を有利に進められるようになります。
今回は、機械保全技能士の概要、機械保全技能士に求められるスキル、資格を取得するメリット、資格を取得する流れなどを解説します。この記事を読めば機械保全技能士のことがよくわかり、転職活動の参考にできます。
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1.機械保全技能士とは?
機械保全技能士は、国家検定の機械保全技能検定に合格した方に与えられる国家資格です。工場の設備管理に関わることで、製造業の生産力向上に貢献します。機械保全技能士を名乗るには国家試験に合格することが必要であり、名称独占資格として位置づけられています。
機械の不具合が発生すると全員の作業が停止して、生産力の低下や不良品の発生につながってしまいます。機械の修理・定期点検・メンテナンスなどのプロフェッショナルである機械保全技能士がいれば、そうしたトラブルを速やかに解決したり、未然に防いだりできます。
仕事内容からもわかるように、機械保全技能士は製造業の現場で非常に重要な資格です。能力評価の一つとして資格手当を給付している企業も多くあります。
実際、厚生労働省が2019年に発表した統計によると、生産労働者の賃金ピークが約393万円であるのに対し、管理・技術系の労働者は約597万円(ともに男性の場合)。ライン生産のなかで「作る」立場から「見守る」立場へキャリアアップすることで、昇給や昇進も狙える資格です。
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参照:厚生労働省|厚生労働省大臣官房統計情報部
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2019/dl/09.pdf
2.機械保全技能士に求められるスキル
機械に不具合が生じて生産力が低下しないよう、工場の設備機械の整備や診断をおこなうのが、機械保全技能士の基本的な役割です。ライン生産における見守り役といえるでしょう。
また、整備・診断・修復はもちろんのこと、不具合や劣化を事前に予測して、実際にトラブルが発生しないように未然に防ぐことも重要な仕事です。メンテナンス計画を作成、その計画に沿ったメンテナンスを実施し、劣化の予測や欠陥の発見をおこないます。
また、設備機械に使われる潤滑油を機械ごとに選定したり、空気圧を測定したりといった、機械の種類にマッチしたメンテナンスや診断の知識・スキルも求められます。
設備の保全に関する知識やスキルだけでなく、異常が発生する予兆に気付く注意力や、発生するトラブルに対して柔軟に対応する判断力も、機械保全技能士に求められるスキルです。
3.機械保全技能士になるには?
機械保全技能士になるには、国家検定である「機械保全技能検定」を受験して合格し、国家資格を取得する必要があります。資格は最上位資格の「特級」から、「1級」「2級」「3級」の全4等級に区分されており、それぞれの等級ごとに学科試験と実技試験があります。
学科試験は多肢択一式(複数の回答候補の中から正しい物を選択)または真偽法で実施され、100点満点中65点以上が合格ラインです。
実技試験に関しては、1級から3級までは「機械の異常発生時の原因究明」など、特級は「工程・安全衛生管理や、作業指導などの計画立案」などに関する問題が出題され、合格するには100点満点中60点以上を獲得する必要があります。
資格を得るには、学科と実技の両方の合格が求められます。
3-1.特級・1級・2級・3級の違い
特級・1級・2級・3級は、それぞれに求められる知識・技能や想定される職場階層に違いがあります。
対象となる人物 | 求められる技能 | |
---|---|---|
3級 | 学生・新入社員 | ある程度の機械保全についての知識・技術を有していること |
2級 | 新入社員・中堅オペレーター | ある程度の修理・点検が自己完結できる知識・スキルを有していること |
1級 | 製造部門・機械管理部門のリーダー | 機械一般、電気一般、機械保全法一般、材料一般、安全衛生などの知識を有していること |
特級 | 製造部門・機械管理部門の管理職 | 工程管理・作業管理、品質管理、安全衛生管理、作業指導、機械保全などに関する幅広い知識・技術を有していること |
3級は製造業への就職を目指す学生や新入社員が対象で、学校の教育や新入社員教育を確認するためといった目的で利用されます。
2級は3級よりも高度な知識・技能を有し、一般的な修理や点検を自己完結できることが目安です。教育成果の確認だけでなく、評価の条件として設定されることもあります。
1級は製造・保全部門のリーダーとして必要な機械一般・電気一般、機械保全法一般、材料一般など、現場で必要性が高い知識が求められます。
特級は、1級の取得に加えて5年以上の実務経験が必要であり、工程管理・作業管理、品質・安全衛生管理、作業指導など、管理職として現場指導をおこなうのに必要な技能が求められます。
4.機械保全技能士の資格を取得するメリット
機械保全技能士の資格を持っていなくても、有資格者と同様の仕事をすることは可能です。しかし、機械保全技能士の資格を取得することで、これからご紹介する5つのメリットが得られます。
4-1.転職や就職の際に有利になる
機械保全技能士を取得する大きなメリットの一つは、転職や就職で有利になる可能性が高くなることです。
機械保全技能士は講習を受ければ認定されるタイプの資格ではなく、国家技能検定を受験して一定以上の点数を取得しないと合格できません。そのため資格を取得すれば、機械保全に関する知識や技能を持っていることを客観的に証明できます。
生産ラインを持つ製造業において機械のトラブルを未然に防いだり、トラブルを迅速に処理できたりすることは、生産性を維持・向上させるために必須の作業です。
そのため、機械保全の知識を持った有資格者は製造業の転職市場で重宝されており、内定を得やすい可能性があります。
4-2.キャリアアップにつながる
機械保全技能士の資格は、自身のキャリアアップにも活用できます。企業によっては機械保全技能士の資格取得が、昇格・昇進要件に含まれているためです。
実務経験に応じて上位の資格を取得することができれば、主任・係長・課長といったように、現場を統括する管理職の立場を目指すこともできるでしょう。
4-3.資格手当がもらえることもある
企業によっては、機械保全技能士に対して資格手当を支給することもあります。
受け取れる資格手当の金額は企業によって異なりますが、1級機械保全技能士で月数千円~1万円程度が一般的なようです。一方、企業によっては2万円前後の資格手当を受け取れる場合もあります。
5.機械保全技能士の資格を取るには?
機械保全技能士の資格を取得するための技能検定は、厚生労働省指定試験機関である公益社団法人・日本プラントメンテナンス協会が実施しています。
各級ごとに異なる受験資格が設けられており、受験資格を満たさないと受験ができない点に注意が必要です。
必要になる主な実務経験 | |
---|---|
特級 | ・設備保全に関する実務経験が5年以上ある ・機械保全技能検定1級の資格を取得している |
1級 | ・設備保全に関する実務経験が7年以上ある ・2級取得後に設備保全に関する実務経験が2年以上ある ・3級取得後に設備保全に関する実務経験が4年以上ある |
2級 | ・機械保全に関する実務経験が2年以上ある ・機械保全技能検定3級を取得している |
3級 | ・機械保全に関わる業務に従事している ・機械保全に関する業務に従事しようとしている |
※1級と2級の実務経験については、「大学・短大の工学部卒業」「工業高校卒業」「職業訓練の修了」などの短縮要件が設けられている。
5-1.申し込み方法
申し込みは、インターネット申請または郵送でおこないます。2023年第1回の3級試験では、申し込み方法によって以下のように締め切り日が異なっていました。
- インターネット申請受付期間:2023年4月3日(月)10:00〜4月21日(金)18:00まで
- 郵送申請受付期間:2023年4月3日(月)〜4月14日(金)消印有効
郵送の場合は到着までに時間を要するため、早く締め切られる点に注意が必要です。
受験地は、47都道府県に1ヵ所を目安に、県庁所在地または地理的・交通の便を考慮した地域に設置されます。詳しい受験地については、受験する際に機械保全技能検定の公式サイトでご確認ください。
また、受験級に関係なく、以下の受験費用も必要です。
- 学科試験・実技試験両方の受検:20,000円
- 学科試験のみ受験:4,600円
- 実技試験のみ受験:15,400円
※2023年6月現在の費用です。
5-2.難易度と合格率
機械保全技能士の難易度や合格率は、どの級を受験するかによって大きく異なります。2022年度に学科試験と実技試験の両方を受験した方の合格率は以下のとおりです。
受験申請者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
特級 | 495人 | 106人 | 21.4% |
1級 | 5,622人 | 1,386人 | 24.7% |
2級 | 9,341人 | 2,917人 | 31.2% |
3級 | 5,419人 | 4,338人 | 80.1% |
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参考:2022年度 機械保全職技能検定 試験集計情報
https://www.kikaihozenshi.jp/pdf/kekka_2022nendo_zensagyo.pdf
合格率をみると、3級とそれ以外の級で大きな差があることがわかります。特に特級と1級は合格率が30%を切っており、難易度の高さがうかがえます。
一方、3級は実務経験が必要なく誰でも受験でき、管理のサイクルやメンテナンスの方法、故障の原因など、設備機械の整備や診断についての基本的な知識が問われます。実技試験も上位級と比べれば難しい内容ではありません。
試験時に提示される潤滑油をみて粘度や用途を当てるなど、見た目で判断する内容が中心です。難しそうに思うかもしれませんが、潤滑油などの種類や用途をコツコツと覚えることで高得点が期待できるでしょう。
3級の取得は2級受験の要件を満たすことにつながるため、上位資格を狙っている方もまずは3級から受験してみてはいかがでしょうか。
5-3.勉強方法
機械保全技能士の試験は学科試験と実技試験にわかれており、それぞれで勉強方法が異なります。
学科については、市販されているテキストを読み込み、過去問をやりこむことで合格することが可能です。インターネット上では過去問4年分の試験内容を無料で公開しているので、まずはそこから始めてみましょう。
間違った問題や理解が追い付かない問題があれば、書店で市販のテキストを購入し、なぜ間違えたのかを理解したうえで過去問を何度もやり直すことをおすすめします。
実技に関しては、写真、図、語群などの資料については公表されていませんが、出題内容を予測して対策資料としてまとめているサイトもあります。それらも参考にしつつ、想定問題集を購入して繰り返し問題を解いてみましょう。
6.まとめ
製造業が生産性を上げるには生産ラインが正常に作動していることが不可欠であり、トラブルを未然に防いだり迅速に復旧したりできる機械保全技能士は重要度の高い存在です。
「資格手当をえる」「キャリアアップの要件を満たせる」といったメリットも多く、製造業を目指すならぜひ狙いたい有力な資格といえるでしょう。
ただし、特級や1級などの上位資格を受験するには長い実務経験が必要です。機械保全技能士の資格を取得するなら、早めに製造業に就職して機械保全の実務経験を積むことをおすすめします。
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