記事サムネイル
工場探訪

東京の町工場が、ロケットの部品を“絞る”! 北嶋絞製作所が手掛ける、「へら絞り」ってなに?

お気に入りに追加

更新日:2017年05月24日

    目の前にあるのは、ものすごいスピードで回転する金属の板。そこに職人が鉄の棒を押し当てると…あら不思議! 硬く、平だったはずの金属板がみるみるうちにうつわの形へ変形していくではありませんか〜!

    これが、「へら絞り」という金属加工技術。完成品は表面のなめらかなカーブが美しく、細かく、精度の高い加工にも対応できるのが特徴です。今回は、日本国内でも特に高いへら絞りの技術を持っている東京・大田区にある北嶋絞製作所の工場に潜入し、お話を伺いました!

     

     

     

    高速回転する金属板をコントロール! 寸法誤差はわずか0.015ミリ

     

    −−北嶋絞製作所では、主にどんなものを作っているのでしょうか?

     

    へら絞りは、回転する金属板に“へら”と呼ばれる鉄の棒を当てて、少しずつ内側へ曲げるように、金属板を“絞り上げる”加工技術です。やかんや洗面器など、日用品をへら絞りで作ることもありますが、うちではパラボラアンテナやロケットの先端部分、航空機の部品など、特殊な金属パーツを手掛けることが多いですね。多品種・少量生産がメインで、月に約70〜80社ほどの会社と取引を行っています。
    S001_01.jpg

    ▲ 北嶋絞製作所 社長の北嶋貴弘さん。

     

    −−へら絞りの難しいところとは、どんなところですか?

     

    へら絞りは、「圧力を加えると伸びる」という、金属の性質を使って加工しているのですが、同じように「伸ばしても元に戻ろうとする」というやっかいな性質もあるんですよ。そこで金属に加える微妙な力をコントロールできる、職人の技術力が必要になってくる。寸法誤差が±0.015ミリまで、へらを当てたときに手に伝わる感覚で判断できるのが、うちの職人の技術ですね。
    S001_02.jpg

    ▲ 北嶋絞製作所で加工した、ロケット先端部の部品。

     

     

     

    巨大パラボラアンテナや、アーティストの作品も“絞る”!?

     

    −−他社にはお願いできないような仕事を受けることがあると聞いたのですが。

     

    最近では、うちの職人の技術力を見込んで、国立天文台とJAXA(※)から、直径約4メートルのパラボラアンテナの製作依頼を受けました。世界最高の電波望遠鏡を作る計画があるそうです。ほかにも、アーティストがデザインした複雑な形のオブジェなど、特殊な仕事を受けることも多いです。そのつど試行錯誤しますが、難しい仕事の方がやりがいがありますね。
     

    S001_03.jpg

    ▲ へら絞りの加工中の職人。回転する金属板にへらを当てると、みるみるうちに変形していきます。

     

    −−大きなものを絞るときは、どのようにやっているのでしょうか?

     

    大きくて厚い金属を絞るときは、4人くらいで作業をすることもあります。縦一列に並んでへらを抱え、一番前の人が「右に行け」「力を入れろ」などと指示を出して、その指示に従って後ろの人が舵をとるんです。大きなものでも長い時間をかけることはなく、一気に絞ります。体の動かし方を合わせる必要があるので、息の合う職人同士じゃないとうまくいかないんですよ。

    ※ JAXA…宇宙航空研究開発機構のこと
     

     

     

    「新人が失敗を隠そうとしても、わかる。自分もそうだったから(笑)」

     

    −−ご自身が職人としての訓練していたときのことを覚えていますか?

     

    毎日同じことを繰り返しているのに、なかなかコツがつかめませんでした。せっかく練習したのに土日で休むと感覚を忘れてしまって、また振り出しに戻ってしまうんですよ(笑)。入社した20歳のころは、センスがないのかも…? と悩むこともありました。ですが負けず嫌いなので、「他の人にできるなら自分も絶対できる」という思いで、技術を身につけました。
     

    S001_04.jpg

     

    ▲ 修行中のご自身について、工場の会議室でじっくりお話を伺いました。

     

    −−北嶋社長も、最初は苦労することが多かったんですか?

     

    そうですね。最初は仕事を「やらされている」という気持ちが強かったです。周りは昔ながらの職人ばかりだったので、できなければ怒られたこともありました。それでも少しずつ経験を積んで難しい加工に挑戦できるようになると、どんどん仕事が面白くなっていきましたね。今でもよく、新人が失敗した部分を隠そうとして色々工夫するのですが、これは見ればすぐにわかりますね。僕自身が失敗ばかりしてきたので(笑)。

     

    −−現場の職人によく伝えていることはありますか?

     

    いま最年少の職人は17歳ですが、10代や20代の若手にも「敬語を使うな」と言っています。敬語だと、聞きたいことの半分しか聞けなくなってしまうんですよ。そして、若手の挑戦も大事にしています。うちでは1キロあたり10万円にもなる高価な金属を扱うこともあります。当然作業は難しくなるのですが、そういうハードルの高い仕事も、最近は若手がやりたがるんです。もちろん失敗することもありますが、成功した時は彼らの自信になりますから。若いうちは、難しい作業にも積極的に挑戦してほしいですね。
     

    S001_05.jpg

     

    ▲ 会議室には、は、北嶋絞製作所のルーツともいうべき、創業時に使われていたモーターが飾られています。

     

    −−北嶋社長が考える、「ものづくり」の楽しさとはなんでしょう?

     

    僕は、ものづくりというのは手作業が一番だと思っています。色々なものを思い通りに作れるのは楽しいし、ひとつ技術を身に付ければ、それを別の作業に応用することもできるんですよ。職人を目指す人は、効率のいい機械が開発されても、職人には「工夫を楽しむ」という、ものづくりの基本を忘れずいてほしいですね。
     

    まとめ

    従業員約二十人の工場から航空宇宙産業の重要なパーツが生み出されるという、まさに「下町ロケット」そのままの世界。工場を案内してくれた北嶋社長の横顔からは、イチから技術を身につけてきた職人の自信がうかがえました。北嶋絞製作所では、へら絞りの体験も受け入れています。自分の力加減で金属が変形していくさまは感動モノ! 一度、体験しに行ってみてはいかがでしょうか。

    S001_06.jpg

     

    【取材協力】
    株式会社北嶋絞製作所 代表取締役 北嶋貴弘さん
    東京都大田区京浜島2−3−10
    URL:http://www.kitajimashibori.co.jp/index.html
     

コメント

コメントを投稿する

簡単登録!

会員になってお役立ち情報をGETしよう!! ものコレとは

関連記事

工場探訪TOPへ

削除したコメントは元に戻せません。
コメントを削除しますか?

メールアドレス

パスワード

簡単登録!

会員になって
お役立ち情報をGETしよう!!

ログイン

無料会員登録

ものコレとは

こちらの機能をご利用いただくには、
ログイン または 会員登録をしてください。

「Webで完結 スピード応募」とは?

UTエイムが独自に開発した、Web上でいますぐ行うことができる適性診断です。

■「Webで完結 スピード応募」を受けると?
  • ・24時間いますぐその場で受けられて
  • ・面談に行く前に合格可能性を確認できて
  • ・終了後にその場で面談予約も行える※
  • ※合格した方のみの機能です。

まだ「自分と合うかな?」と思っている方でも、ぜひお気軽に、まずは適性診断を受けてみてください!