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工場探訪

一辺わずか1ミリ以下のサイコロを削り出す!? 最新の技術がもたらす「未来を想像する力」とは?

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更新日:2017年10月19日

    会社の受付に入って真っ先に目に入る、ガラスケースに入れて保管された銀色のバラ。一見するとシンプルな模型に見えますが、覗き込んでみると、およそ15センチほどの大きさであるにも関わらず、一枚一枚の花びらや葉っぱ、棘にいたるまで、とても精巧に作られているのです。

     

    これが、「株式会社入曽精密」が持っている金属の超微細加工技術を集結させて2002年に作り上げた「アルミのバラ」。聞くところによると、この「アルミのバラ」を作るだけでは満足せず、一辺が1mmに満たないサイコロを作ったり、精巧なロボットフィギュアを作ったりと、世界の職人を驚かす製品を作り続けているのだそう。なぜこんなにも次々と世の中にインパクトを与えるモノを作り続けるのでしょうか? これらの技術を利用して、何を実現しようとしているのでしょうか? 社長の斎藤清和さんにお話を伺いました。

     

    本文会社の受付に入って真っ先に目に入る、ガラスケースに入れて保管された銀色のバラ。一見するとシンプルな模型に見えますが、覗き込んでみると、およそ15センチほどの大きさであるにも関わらず、一枚一枚の花びらや葉っぱ、棘にいたるまで、とても精巧に作られているのです。

     

    これが、「株式会社入曽精密」が持っている金属の超微細加工技術を集結させて2002年に作り上げた「アルミのバラ」。聞くところによると、この「アルミのバラ」を作るだけでは満足せず、一辺が1mmに満たないサイコロを作ったり、精巧なロボットフィギュアを作ったりと、世界の職人を驚かす製品を作り続けているのだそう。なぜこんなにも次々と世の中にインパクトを与えるモノを作り続けるのでしょうか? これらの技術を利用して、何を実現しようとしているのでしょうか? 社長の斎藤清和さんにお話を伺いました。
     

    デジタル技術を利用した金属加工技術で、モノづくりの可能性が広がった

    −−−入曽精密が、金属の超微細切削加工に取り組み始めたのはいつ頃からですか?

     1983年、私が25歳のときに、父が創業した入曽精密に入社しました。当時は取引先の依頼にしたがって、金属を削ったり、穴を開けたりといった加工をして納入するだけのよくある町工場でした。その当時は金属を加工する際、アルミや鉄の塊を用意し、削りたいポイントに印をつけて機械を動かすという、アナログな方法を取っていたんです。

     

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    ▲ お話をうかがった、入曽精密 代表取締役 斎藤清和さん。

     

     今のような超微細切削加工に取り組み始めたのは、完成品の図面を3次元のデジタルデータで入力し、最新鋭の「マシニングセンター」という工作機械で金属を削る、「MC造形システム」を導入してからです。これによって、緻密で高精度の加工が行えるようになりました。

     

     もちろん最新の機械さえあれば、自動でクオリティの高いものづくりができるわけではありません。そこでは「職人の技」と「デジタル技術」の融合が必要です。

     

    −−−なぜ、デジタル加工技術を扱ううえで、職人の技術が求められるのでしょうか?

     金属は、その日の湿度や気温によって硬さや、薄く削っていったときの反り具合が変わってきます。最新の機械でも、そこまで細かい条件を考慮して加工することはできないので、人がその日の天候を見て、金属を削るのに使うドリルを使い分け、マシニングセンターをセッティングしないといけないんですよ。経験を積んだ職人じゃないと、そういった細かい判断ができません。

     

     他にも、金属を削っていくプロセスなど、完成までには人が決めなければいけない要素がたくさんあり、その部分で手を抜くとモノのできが悪くなってしまいます。デジタル機器にデータを入力して加工しているといっても、最終的に職人の技術や判断は必要不可欠なんです。

     

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    ▲ 工場内には加工で使用するマシニングセンターが。


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    ▲ マシニングセンターに取り付け、金属を削るのに使用するドリル。
      加工する場所や細かさに応じて、何種類もあるドリルを使い分けるのだとか。

     

    これからのものづくりは、インスピレーションが大切になってくる

    −−−「アルミのバラ」や「世界一小さなサイコロ」などの作品は、どういった経緯で製作に至ったのでしょうか?

     デジタル技術を用いた微細加工ができるようになった結果、今までの限界を越えてものづくりができるようになりました。入曽精密では、人工衛星の部品や世界最高峰のモータースポーツ用のエンジン部品など、大手企業から依頼を受け、さまざまな精密部品の加工を行っています。ですがそのほとんどが守秘義務のあるもので、せっかくの技術を世間の人に伝えられないんですよ。技術の進歩によってこれだけの加工ができるようになったことと、会社が持っている技術を広めるべく「アルミのバラ」や「世界一小さなサイコロ」を作りました。

     

    −−−それぞれどんな技術的な特徴があるのでしょうか?

     2003年に製作した「アルミのバラ」は、あまりにも花びらや葉っぱが薄いことから「アルミ箔をくっつけて作ったオブジェ」だと勘違いする人も多かったです。しかし、これは高さ15cmのアルミの塊から削り出して作っています。

     

     また、一片の長さが0.3mmの「世界最小のサイコロ」は、2004年に真鍮の削り出しで製作したものです。肉眼では見えないほどの大きさですから、刃先を正確に制御し金属を切削する技術はもちろん、金属を加工するにあたって対象物をしっかりつかみ、固定する技術も必要になるんです。
     


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    ▲ 「アルミのバラ」。花びらの一枚一枚の、そのシワまで作り込まれています。

     

    「アルミのバラ」のような曲線や細かな加工はこれまでの加工機による削り出しでは不可能と言われてきたものであり、「世界最小のサイコロ」も金属をつかんで固定するという、他社にはない技術です。2017年にはさらに加工技術を高め、一辺が0.1mmの、さらに小さい「世界最小のサイコロ」を実現しました。自らも、トライ&エラーを繰り返しながら、つねに限界に挑戦にしています。

     

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    ▲一辺0.1mm の世界最小のサイコロ。肉眼では確認できず、ケースに入っている。

     


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    ▲ 「世界最小のサイコロ」は、顕微鏡でようやく確認できる(左奥モニターに映っているのがサイコロ)

     

    −−−現在、入曽精密ではどんな技術革新に取り組んでいるのでしょうか?

     昨年から取り組んでいるのは、私たちが持っている切削加工技術を一般の人々へ開放することです。これまで、1mm以下の製品を生み出す超微細加工技術や、加工物を固定するための技術など、ときには新たな装置も開発し、誰もできなかった精密加工の道を切り開きました。

     

     普通だったらこの技術を独り占めするところですが、むしろ誰でもアクセスできるようにすれば、「これを使えばこんなことができるようになるよね」と、私たちでは思いつかなかったような方面から技術を活用するための道が開かれていくんです。実は、以前から構想としては描いていたのですが、そのための仕組みが整ってきた今、ようやく実現できる目処がついてきました。

     


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    ▲ 工場入ってすぐの場所に張り出されている、入曽精密の目標

     

    −−−なぜ、ここまで新たな技術にチャレンジし、それを実現してくることができたのでしょうか?

     私は世の中の常識を打ち破り、つねに最高のものを作っていきたいんですよ。製造業に携わっていると、自分の技術力に限界を感じてしまうことがあります。でも、世の中には絶対に不可能なことはないんですよ。「できない」というのは、自分で限界を決めているだけです。

     

     これからの製造業では、モノをつくっているだけではダメです。それだと、今までの延長線上のモノしかつくれないんです。これからのものづくりはどうなっていくのか、その技術の先にある私たちの生活や環境のあり方を想像して、これからやってくる未来の社会に関する「仮説」を立て、ものづくりを通してそれを検証していく姿勢が必要です。できあがったモノを使って喜ぶ人やその笑顔を想像して、インスピレーションを大切に取り組んでいくこと。それによってようやく新たな領域を切り拓いていけるんですよ。

     

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    ▲ 同じく、超微細加工で製作し新薬師寺の「バザラ大将」。

     

    「自分の技術を深めていく」性格の日本人だからこそできるものづくりを

    −−−これから先、日本のものづくりとして大切なことは何なのでしょうか?

     生真面目さや、手先の器用さといった日本人の性格は、日本の土地やその風土に育まれて生まれたもの。歴史を見ても、日本は他の国と地続きになっていない国で、海外から新しい技術を輸入しにくい。だからこそ、自分たちが持っている技術をさらに深めていく性格が身についたのだと私は考えています。そんなバックグラウンドを持っている日本にしかできない、日本人にしかできないことを意識して、やるべきだと思います。


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    ▲ 左上から時計回りに、「世界一フェアなサイコロ」、「スマートフォンカバー」(×2)、「チタンものさし」、「ギターピック」。商品はいずれも製品通販サイト「REAL EDGE」から購入可能。

     

    でも、イノベーションをおこすには、作業を突き詰めるだけでなく、原点にもどって深く掘り下げて考えて取り組んでいくことも大切。一度目の前の業務から離れて、新たな仮説がでてきたら、そこに向かってもう一度集中する。とても非効率的で世の中の流れとは逆行しますが、そういうことをやらないと新しいモノづくりは産み出せないし、日本のものづくりには必要なことのように思います。


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    ▲ 工場を案内してくれた若手職人の峰野さん。

     

    ゲームや映画で見たものを、自分で形にできる時代がやってくる

     

    −−−最後に、これから製造業で働こうという若者にメッセージをいただけますか。

     3Dプリンターのように金属加工ができる機器はまだ高額ですが、これからリーズナブルになって、もっと普及していくでしょう。すると、誰でも自分のイマージネーションを形にすることができるようになる。つまり、これからは画面の向こうで楽しんでいるゲームやSF映画の世界にあるものが、現実世界でも自分たちの手でどんどん作れるようになってきます。

     

     たとえば可愛らしいロボットや魅力的なガジェットなど、自分が今まで想像することしかできなかったものが、形になっていく。いま製造業に入れば、自分が思い描いていたものを形にする仕事に関わっていくチャンスがあります。そう考えると、ワクワクしますよね。

     

    まとめ

    従業員10人余りの会社にも関わらず、国内外の有名企業やメーカーから開発の相談を受け、加工品を一目見たいとお客さんが訪れることもある入曽精密。十分な注目を集めてなお新しい技術を追求し続けるのは、日本が持っている技術への信頼と、これからの「ものづくり」があるべき姿に対する強いビジョンがあったんですね。入曽精密の製品では、アルミ削りだしのスマートフォンケースが一般向けに販売されています。最先端の金属加工技術に興味を持った人は、ぜひ一度、手にとってみてはいかがでしょうか?

     


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    【取材協力】
    株式会社 入曽精密 代表取締役 斎藤 清和さん
    埼玉県入間市狭山ケ原369−1
    URL:http://nakaprin.jp/
    REAL EDGE:http://shop.real-edge.com/index.php
     

     

     

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