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工場探訪

1時間で、焼き鳥1万本に串を刺す! トップシェアメーカーが目指す、皆が喜ぶ製品が生み出すものとは?

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更新日:2018年02月02日

    カンカン照りの真夏日にキリッと冷えたビールと一緒にいただく焼き鳥。あるいは、寒い冬にハフハフと頬張りたいおでん。食べ終わったあと、手元に残っているのは細長い1本の「串」です。いつもはすぐに捨ててしまいますが、今日はちょっとだけ、この串について考えてみましょう。

     

    そもそも、この串は一体誰が刺しているのでしょうか? 抜けにくく、かつ食べやすく串を刺すには、実は熟練の職人技が必要です。しかし、人の手では1時間に60本刺すのが限界。そこで登場するのが、1時間に1万本のペースで食材に串を刺してくれる、「串刺機」です。

     

    その串刺機を開発・生産しているのが、神奈川県相模原市にある「コジマ技研工業」。市場のシェアは9割とも言われるコジマ技研ですが、事実上オンリーワン企業になっても毎年新しい串刺機を開発し続けているのだとか。「攻め」の姿勢を続ける理由を、社長の小嶋道弘さんにお話を伺いました。

     

    「職人の技術の再現」「なんでも刺せる」が、シェア9割へと導いた

    −−−コジマ技研の「万能串刺機」は世界シェアおよそ9割を占めているそうですね。なぜそこまでシェアが広げることができたのでしょうか。

     創業者である会長が開発を始めた40年前は、串刺機を造っているメーカーは二十数社あったそうです。ところがどの機械も、単純に突き刺すだけだったり、食材の真ん中にうまく刺さらなかったりして、「串刺し機は使い物にならない」という認識が広がっていました。

     

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    ▲ 今回話を伺った、コジマ技研工業の小嶋道弘社長。

     

     たとえば焼き鳥の串だと、単純に刺すだけでは火にかけたときに肉汁などが出て肉がずれ、串から外れてしまいます。それを防ぐために、職人さんは食材を波打たせて、糸で縫うように刺しているんです。コジマ技研の串刺機はそうした手の動きを再現できたので、その性能が認められて、シェアが伸びていきました。

     

    −−−具体的には、どんなものを刺すことができるのでしょうか?

     ざっくりいうと、食材ならなんでも刺せます。焼き鳥やフランクフルトなどのお肉、パン、お団子、エビなどの魚介類、とにかく一通りのものは刺せるように作っていますね。食材以外ではトイレットペーパーの中心に芯を通したい、ベアリングに軸を通したい、といった依頼を受けることもあります。

     

     工業製品のような、1ミリの狂いもなく全て同じサイズでできているものは、そこに軸を通すのも簡単なんですよ。でも食品はそれぞれ形が違うので難しいんです。鶏肉だけでも、肉の品種や生産地、部位によって硬さが全然違ってきます。
     


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    ▲ トレー(緑色のもの)に置かれた食材を、リズミカルに串で刺していきます。

     

    −−−そういった「形の違うものでも中心を外さずに串を刺せる」技術は、どのようにして実現できたのでしょうか?

     串刺機は、食材を専用のトレーで上から抑えて串を刺します。上手く刺せるかどうか、実はこのトレーの設計にかかっているんですよ。焼き鳥では、トレーの壁に少し傾斜をつけることで、鶏肉が潰れず、ふっくら丸く手で刺したように仕上がるんです。串を打つ食品ごとにトレーがあり、これも全て自社で開発しています。

     


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    ▲ 串刺機で使われているトレー。一見シンプルでも、ここにコジマ技研の技術が込められています。

     

    オンリーワン企業になっても新機の開発を続ける理由

    −−−コジマ技研の串刺機は、6月に開催される食品工業展で毎年新しい串刺機を発表されるそうですね。オンリーワンの製品であるにも関わらず開発を続けるのには、どういった理由があるのでしょうか?

     その理由は2つあって。一つは、コピー製品に対抗するためです。そもそも、トレーの作り方一つとっても僕らのノウハウが詰まっているので簡単にはマネできないはずなんです。にも関わらず、僕らの機械をコピーして売ろうとする人がすごく多いんですね。

     

     もちろん、そういった人へ法的な処置も行いますが、一方では新しい機械を開発して、コピーする人たちがついて来られないくらい先端を走っていった方が良い。それを続けることで、お客さんも「やっぱりパイオニアだね」と言ってくださいます。

     

     そしてもう一つが、可能な限りお客さんからの要望に応えて開発していると、次から次へと新しい機械ができてしまうからなんですよ。

     

     串刺機は、とにかくお客さんの声を反映することを意識して改良を行っています。最近だと、「冷凍肉を刺したい」という要望を受けて、新しい串刺機を発表しました。冷凍食品に対応しているものは以前からあったのですが、さらに正確で、かつ大量生産のできる串刺機が必要だと思ったんです。


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    ▲ コジマ技研・作業場の壁には、これまでに作られたトレーがズラリ。

     

    −−−実際に串刺機には、お客さんの声を反映したどのような工夫がなされているのでしょうか?

     基本的に、串刺機を使うのはスーパーや食品製造の現場で働いている方です。僕らはパートのおばちゃんをイメージしているのですが(笑)、そんな方がシンプルに使うことができるように、串刺機を操作するボタンも、スタート、ストップ、非常停止の3つだけにしています。要望に応じたカスタマイズを行なうこともできますが、使うときはとにかくシンプルに。これはいつも徹底していますね。

     

     他にも焼き鳥は、昔と比べてボリュームのある肉を使うのが主流になり、串も、丸い竹串から、最近は持ち手が平らな「鉄砲串」を使いたがるメーカーが増えています。お客さんの要望は世の中のトレンドを反映していると思うので、営業時にお客さんの要望を細かく聞き、新作の開発に生かしています。

     

    −−−時には、お客さんから無理なお願いに対応することもあるのだとか?

     無理難題はしょっちゅうで、週に1回くらいは変わった依頼が舞い込んできます(笑)。たとえば、フランスのお客さんから「リンゴの皮を刺せるようにしてほしい」と言われたことがありました。なんでも、フランスではおつまみとして、リンゴの皮を剥いて、2〜3回クルクル巻いたものを食べるそうです。

     

     国によって食の常識が違いますし、僕らは注文を受けて初めて、その文化や刺し方を知るんですよ。びっくりするオーダーが来るたびに、会社で「こんなものを食べるんだ」「どんな味がするんだろう」なんて皆で話しながら、トレーの開発に当たります。その食材のことをよく知らないと開発もできませんから、どのくらいの大きさ、柔らかさで、どのくらい繊維が入っているのか、などを分析して串刺機やトレーを調整していくんです。どうやって機械で実現するか考えるのが毎回難しいところですね。
     



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    ▲ コジマ技研を創業した先代社長は、現社長のお父様。数々の逆境を跳ね返し、串刺機開発にあたったそう。

     

    お客さんに喜んでもらうことが、仕事のスタート地点

    −−−ズバリ、コジマ技研の仕事のやりがいは?

     現在、アルバイトも含めて15人ほどの従業員が働いていますが、うちではエンジニア専業の人を雇っていません。営業も設計もメンテナンスも、全員が携わります。営業先で聞いたお客さんの要望が機械の改良に結びつくので、そういう点は面白いんじゃないでしょうか。

     

     社内に、メンテナンス依頼や故障の原因、串刺機への要望など「お客さんからこんな声を受け取りました」というメモを入れるポストを設置しているんですよ。それを基に、週に1回、皆でディスカッションを行います。お客さんが欲しがっているものを知ることが、新しい開発の方向性を定めるのに役立つんです。とにかく要望を集約して改良に結びつけていく。これが、うちのカンパニーポリシーかもしれないですね。
     


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    ▲ コジマ技研の作業場。ここに部品を納入して、串刺機を組み立てる。

     

    −−−ありがとうございます。最後に、小嶋社長が考えるものづくりの面白さについて教えてください。

     とにかく、お客さんに喜んでもらうことが仕事のスタート地点。使ってくれる人の声を製品に反映しているのも、そのためです。無理難題は絶えませんが、完成したモノに対して「これはいいね」と反応をもらったときが、やっぱり一番嬉しいし、モノづくりを面白いと思う瞬間です。良いモノができたら、お客さんだけじゃなく、作った私たちも嬉しいんですよ。そうすれば、今回だけじゃなく、また次の機会も良いモノを作ることができる。

     

     お客さんに喜んでもらい、それによって従業員のモチベーションが上がれば、よりいいモノができる。いいモノができれば会社が潤う。会社が潤えば従業員に還元できる。この3つを循環していくのが本当にいい会社で、その循環は「お客さんに喜んでもらうこと」から始まるのだと思っています。

     

    まとめ

    今まで何気なく食べていた、居酒屋の焼き鳥やコンビニのフランクフルト。それらの串を、誰がどうやって刺しているのか、考えたことはありませんでした。これからは「この串もコジマ技研の機械で刺しているのかな?」なんて、「串モノ」に対してちょっと親近感がわきそうです。
     


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    【取材協力】
    コジマ技研工業株式会社 代表取締役 小嶋 道弘さん
    神奈川県相模原市中央区中央5-3-14
    URL:http://www.kojimagiken.co.jp/

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